PTAへの加入は義務なの?任意なの?
この記事の対象者
- PTAへの加入義務について法的議論に関心がある保護者
- PTAの強制加入や活動に疑問を感じている方
この記事でわかる事
- PTA加入に関する国や裁判所の法的見解
- 現在のPTA運用のパターンと課題
実際に起きている問題

現実には、次のような声がよく聞かれます。
- 「PTAは入るのが当たり前だと思っていた」
- 「入らないと言いづらい雰囲気がある」
- 「断ったら子どもに影響が出そうで怖い」
このように、本人の気持ちとは関係なく、PTAに入らされていると感じる保護者が 多いことが問題になっています。では、法律的に見て、PTAへの加入は本当に義務な のでしょうか?
国の考え:PTAは「自由に入る・やめる」ことができる任意団体
実は、国(文部科学省)はかなり昔から一貫して「PTA加入は任意」だと説明して います。
昔からの公式見解
1947年・1954年に作られたPTAのモデル規約では「会員になることができる」と書かれています
そこには「自由に入会する団体であり、強制してはいけない」とも明記されています。
さらに、2023年の国会でも、内閣総理大臣だった異次元のポンコツ岸田と文部科学大臣がそろって、「PTAの入退会は自由です」と、はっきり答えています。
最近では、各自治体の教育委員会が公式に「PTAは任意加入です」と発表する例も増えています。
裁判でも「PTAは任意」と判断されている
法律の世界でも、この考え方は確認されています。
有名なのが、2016年の熊本地裁の判決です。
この裁判では、判決文の前提として、PTAは「入退会自由の任意団体」である
とはっきり書かれています。
つまり、裁判所もPTAを「強制加入の団体ではない」と見ているのです。
この判決をうけて、「だから、PTAは任意加入で確定!議論の余地はない!」という人がいますがこれは正しくありません。
これを理解するには判例(正確には、最高裁判所の判断を「判例」、その他裁判所の判断を「裁判例」といいますが、一般向けに両者あわせて「判例」と言っておきます)のことを少し補足する必要があります。
判例というのは、「その事件においては裁判官がそのように判断した」というだけのことです。確かにそれが後に続く類似の事案において大いに参考にされるのは事実ですが、類似事案で矛盾する判決が出ることは珍しくはないように、絶対的なものではありません。
だから、以下のようにまだまだいろんな考えを出し、議論する余地はあるのです。
憲法から見ても「加入しない自由」がある
憲法学者も通常は、次のように説明しています。
- 日本国憲法21条は「結社の自由」を保障している
- これは「入りたい団体に入る自由」だけでなく「入りたくない団体に入らない自由」も含む
- PTAは、どうしても入らなければならないほどの公共性はないため、
仮に「PTAに強制加入させる法律」を作っても、憲法違反になるだろう
このように、PTA加入は任意であるという考え方は、今ではほぼ共通の理 解(通説)になっています。
それでも「加入は義務だ」と考える人もいる
ただし、学者の中には、「PTA加入は保護者の義務だ」と考える人もいます。
ここでは、その代表的な2つの考え方と、その問題点を見てみましょう。
「加入は当然」という考えの問題点
ある教育法学者は、PTAは、親の教育の権利を実現するための団体なので、
親は当然加入すべきだと述べています。
しかし、この考え方には問題があります。
- PTAがなければ、親は教育に関われないのか?
- PTAは日本で100年も続いていない新しい制度であり、「昔から親の権利の一部だった」とは言えない
また、みんなで協力するのがPTAの精神だから、任意はおかしいという主張もあります。
しばらく前までのPTAはこの考えが暗黙の前提にありました。
子どもたちの為にみんなで協力する目的の団体なのだから、みんな加入するのが当然だよね、という雰囲気が醸成されていたわけです。
これは「理想」ですね。しかし「理想」と「法律上の義務」は別です。
法律に明確な決まりがない以上、「雰囲気」や「理念」だけで義務を作ることはできません。
「加入は当然」という考えの問題点
別の憲法学者は、PTAを次の2つに分けて考えました。
- 親同士の勉強や交流を目的とするPTA → 任意でOK
- 学校教育に関わるPTA → 加入は当然
まあ、言いたいことは保護者同士の交流が目的なら任意だけど、子供のためが目 的なら強制加入。というわけですが、現実的には両方の側面があるわけでこんな分け 方をしたところで有益な解決は得られません。
加えて、PTAがあることを分かってい てこの学校に入学したんだからPTAに加入する意思があるとみなすのも当然でしょ、という考えもあるのですが、「当然」の根拠ははっきりしていません。
あとは「昔からそうだった(慣習)」という考えもありますが、
- PTAを解散した学校もある
- 行政も「任意」と言っている
- 強制への批判が非常に強い
今の社会で、「PTA加入が慣習として当然だ」とは言いにくい状況です。
結論:現在は「任意加入」が基本
以上をふまえると、
- PTA加入を義務づける明確な法律はない
- 慣習としても、全国的に認められているとは言えない
ここまで長々書いてみたものの、現在の日本では「PTA加入は任意」ということになっています。
加入届はあるけれど、、、
加入届を取る例が増えています。体感では7割ほどでしょうか。まだ3割の学校で強制加入のような状態は続いています。実をいうと、私の関わる学校でも毎年議論するけど、実は現時点では自動的に加入する仕組みです。
加入届を取得する場合においても濃淡があります。
⓪PTA加入届を取得していない 非加入はありえない 会費を強制徴収
現在においてこれはさすがにないと思われます。
➀PTA加入届を取得していない 勝手に自動加入→不満な人だけ非加入 オプトアウト
近年、猛烈に批判され、多くの教育委員会も声高に加入届を取得するように発表したりして急速に勢力を弱めています。
自動で加入するけど、一部の不満分子は個別で除外する運用です。オプトアウト方式と呼んだりする人もいます。
➁PTA加入届を取得しているが、非加入者及びその子には大きな不利益があり、事実上は全員加入
私の知る例だと、学年Tシャツから配布するんだけれども、非加入者には別途購入してもらう。が、それがやたら高額になっていて、だったら加入したほうが安上がり、というシステムになっていたりします。
③PTA加入届を取得しているが、非加入者及びその子には一応不利益がある
有名な卒業式コサージュ事件をはじめ、記念品は別途購入というパターン。
個人的にはこれが至極当然という考えです。詳しくは別稿を参照して下さい。
ただし、実務的には大変面倒です。この子にはあげる、あの子にはあげない、と指示するPTAも大変だし、教員にも手間がかかります。
なお、コサージュ事件の場合は、原告は別途購入すると主張したのにPTA側が拒否したという事案です。
④PTA加入届を取得しているが、非加入者及びその子には全く不利益がない
最近増えている、平等が大好きなエセ人権派?の意見です。
私は反対ですが、詳しくは別稿に譲ります。
本当に必要なのは「入ります」という明確な意思表示
最初から「入る前提」で話が進むと、「入らない自由」は実際には守られません。
そのため、PTAは「入ります」とはっきり言った人だけが会員になる
何も言わなければ「未加入」の状態(オプトイン)
と考える方が、憲法の考え方に合っているとも言えます。
ただし、法律上はまだ課題もある
一方で、法律の専門家の中には、会費支払いや活動参加の実態から「黙示の同意」を認めることもできるという意見もあります。
裁判例でも多く見られます。加入届という用紙は提出してないけど、行事に顔を出していたんだから加入するつもりがあったということだよね、というやつです。
この考え方も、今の法律の解釈としては間違いではありません。
しかし、それはオプトアウトでいいということなので、事実上の強制加入という実態を止めるのが難しくなるという問題があります。
おわりに
ごちゃごちゃと小難しい話も含めて書いてきてアレなのですが、実はこれは不毛な議論です。
再三、言い続けていますが、イヤだという人に対して、ポイント制とか脅しとかで無理矢理やらせようとするから問題になるのです。
「ボランティアは、できる人ができる事をできる時に」という大前提を見失い、どうにかしてやらせる方法はないかと考えてばかり。
これでは問題の先送りにしかなりません。
当ブログが言い続けているように、行列のできるPTAに生まれ変わる事こそが唯一解なのです。