PTAによる学校への寄付の法的制限と許容される範囲について
この記事の対象者
- PTAから学校への備品寄付の是非に悩んでいる役員・保護者
- 学校予算とPTA会費の線引きを法的に理解したい方
この記事でわかる事
- 学校教育法や地方財政法が定める寄付の制限ルール
- 「強制的な寄付」とみなされる判断基準と、適法とされる範囲
PTAの寄付における法的問題の背景
PTAが学校で使用される備品等を寄付することがある一方で、このようなPTAによる寄付を批判的に捉える見方も存在します。
批判的な見方によれば、本来であれば学 校の設置者である地方自治体が経済的な負担をして備品等を揃えるべきところ、学校 がPTAに肩代わりさせており、適切ではないとされています。
このような見方を踏まえ、果たしてまたいかなるPTAの寄付が許されるのかを法的 観点から検討する必要があります。
PTAの寄付に関連する規定として、通常、学校教育法の規定と地方財政法及びその施行令の規定が挙げられるため、これらの規定を検 討対象とし、関係する裁判例も参照しながら、その運用面も視野に入れて検討するこ とが重要です。
学校教育法による制限の内容と解釈
設置者管理主義と設置者負担主義の原則
学校教育法第5条は、学校の管理及び経費の負担につき、「学校の設置者は、その 設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負 担する。」と定めています。
この条文は、設置者管理主義及び設置者負担主義を定めた条文であり、当然の原 則を確認的するために規定した条文であると理解されています。
本条からは国民の教 育を受ける権利を実現するための経費は学校の設置者が負担すべきであることが読み 取れます。
寄付の全面禁止ではない
しかし、本条によって寄付それ自体が全面的に禁止されているわけではありませ ん。そのため、本条による規律があるとしても、PTAが寄付を行う余地はあると言え ます。
地方財政法及び施行令による具体的制限
住民への負担転嫁の禁止
地方財政法第27条の4第1項は、「市町村は、法令の規定に基づき当該市町村の負 担に属するものとされている経費で政令で定めるものについて、住民に対し、直接で あると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならない。」と定めています。
地方財政法施行令第52条が住民に負担を転嫁してはならない経費として、以下を 挙げています:
- 市町村の職員の給与に要する経費(1号)
- 市町村立の小学校、中学校及び義務教育学校の建物の維持及び修繕に要する経費 (2号)
学校の事務員の給与をPTA会費で払っているという例を聞いたことがありますが、 これは明らかに本条項に違反しています。
PTAが負担してはならない経費の具体例
これらの規定によれば、以下の経費をPTAが負担することは禁止されていま す:
- 小中学校の建物の維持に関する経費(火災保険料・電灯料・水道料・管理用消耗 品等)
- 修繕に要する経費(通常の破損の修理に要する費用・壁の塗り替え等に要する費 用等)
- 小中学校の建物の建設に要する経費(解釈上)
たとえPTAが真に自発的に負担したいと主張しても、当該負担は法的に禁止されて います。
割当的寄附金等の禁止規定
地方財政法第4条の5は、割当的寄附金等の禁止として、「国は地方公共団体又は その住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又は住民に対し、直接であると間 接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的 に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。」と定め ています。
非常に堅苦しい表現ですが、寄付金を『割り当てて強制的に徴収する』とは、地 方公共団体等がその住民に対し、寄付に応じない場合には不利益をもたらすべきこと を暗示するようなのはダメという内容です。
学校とPTAの関係でいえば、「PTAでテントを買ってください。さもないと熱中症 リスクがあるので運動会は中止です」などは事実上の強制と判断されるかもしれませ ん。
裁判例から見る「強制的な寄付」の判断基準
地方財政法第4条の5違反を認めた事例
かつては地方自治体からの強制的な寄付要求が問題となることがありました。大 阪地堺支判昭和62年2月25日では、地方公共団体が事業者に対して指導要綱に基づき 開発協力金の負担を求めた行為について、以下の理由で地方財政法第4条の5違反を認 定しました:
- 開発協力金が寄附であることの説明を一切しなかった
- 建築確認申請が受理されるためには開発協力金の納付が必要である旨の行政指導 を明示的に行った
- 事業者の減免措置の適用要求等に対して強固な態度で開発協力金の納付を説得し 続けた
- 建築確認申請書の受理を保留し、建築確認の審査を引き延ばすという不当な手段 を背景にした
地方財政法第4条の5違反を認めなかった事例
一方で、以下の裁判例では同条違反を認めませんでした:
昭和61年大阪地判の判断基準
「寄附金を割り当てて強制的に徴収する行為とは、国または地方公共団体がその 権力関係または公権力を利用して、強制的に寄附の意思表示を為さしめて、これを収 納する行為をいう」と定義し、職員が開発協力金の趣旨内容を説明した以外に、権力 関係や公権力を利用した強制の事実がないとして違反を否定しました。
平成4年大阪地堺支判の判断要素
市の担当者が以下の対応をしたことを評価して違反を否定しました:
- 負担金の目的を説明した
- 法的拘束力はない旨の説明をした
- 納付しなかった場合の不利益等について何も述べなかった
PTAの寄付における適法性の判断基準
総合的判断による違法性の認定
地方財政法第4条の5で禁止されている強制的な割当的寄付と認定されるか否か は、以下の諸般の事情が総合的に考慮されて判断されてきました:
- 寄付の要望に法的拘束力がない旨の説明をしたか否か
- 要望に従わなかった場合の不利益に言及したか否か
- 実際に過去に要望に従わなかった者に対して不利益となる措置を講じたことがあ るか否か
学校からの打診に対するPTAの寄付の適法性
PTAから学校への寄付は、一律に地方財政法第4条の5に違反するとも、また違反し ないとも言えません。ただし、少なくとも、学校側が単に「◯◯を買ってほしい」と打 診するだけで、それ以上の行動を伴わない場合には、学校側の打診に応える形で PTAが寄付を行ったとしても、そのことが地方財政法第4条の5との関係で違法と判断 されることはないでしょう。
ですがしかし、校長からの依頼を強制と受け止めるPTA役員は少なくないので問題のある行為です。
忖度による寄付の法的評価
学校からの寄付の打診に際し、PTAの側が忖度をし、寄付を行うということは考え られ、そこに事実上の強制力を認定できるとして、学校からの打診に応える形で PTAが寄付を行うことは違法であるとする見方もありえます。
しかし、仮に立法者がそのような場合まで違法と捉え、これを禁止しようとする のであれば、旧地方財政再建促進特別措置法第24条第2項のように強制であろうと任 意であろうと寄付を禁止する旨の規定を置くでしょう。
現在、PTAから学校への任意 の寄付まで禁止する規律はないことを踏まえると、単に学校からの打診があったとい う程度では、やはり強制力は認定されず、また違法と評価されることもないと解され ます。とはいえ、教育委員会は校長に対して、打診すること自体をやめるよう指導すべきでしょう。
要は真摯な同意があれば問題ない、とする考えですが、これについて は私の体験談をもとに渾身の超大作を書いたのでご覧下さい。